失うほうが大きく感じられる
同じ金額でも、失ったときの痛みのほうが得たときの喜びより大きく感じられます。そのため損失を確定することが特に難しくなります。売らなければまだ失っていない気がしますが、口座の価値は売っても売らなくても同じです。売らないという選択も、持ち続けるという積極的な判断であることを見落としがちです。
損失を大きく感じる傾向、上がった銘柄から売る癖、見たいものだけ見る偏り、群衆心理、最初の数字への固執をまとめました。事前のルールと投資日記での対処も扱います。
同じ金額でも、失ったときの痛みのほうが得たときの喜びより大きく感じられます。そのため損失を確定することが特に難しくなります。売らなければまだ失っていない気がしますが、口座の価値は売っても売らなくても同じです。売らないという選択も、持ち続けるという積極的な判断であることを見落としがちです。
利益の出た銘柄は早く売って利益を確定し、損失の出た銘柄は回復を待って長く持つ傾向が、繰り返し観察されています。こうすると、うまくいっているものを先に手放し、うまくいっていないものだけが残る結果になります。判断の根拠がその銘柄の見通しではなく自分の取得価格である点が問題です。
すでに買ったあとは、その判断が正しかったという情報のほうが目に入りやすくなります。反する情報は根拠が弱く見え、同じ側の意見を探して読むようになります。これは意志の問題ではなく、人が情報を処理する基本的な傾向です。反対の根拠をあえて探して書き出すことが、まだしも通じる対応です。
多くの人が同じことをしているという事実は、その判断が正しい根拠ではないのに安心を与えます。特に速く上がるものを見ると、いまやらないと逃すという感覚が生まれ、この感覚は価格が最も上がった時点で最も強くなります。遅れて入った人が最も大きく傷つく構造がここから生まれます。
感情を感じないようにする試みはうまくいきません。代わりに、感情が湧く前に基準を決めておくことは実際に効きます。なぜ買ったのか、どんな条件なら判断が誤りだったことになるのか、比重はどこまでか。これらを書いておけば、その場の感覚ではなく書いた基準と比べることになります。この文章はよくある偏りを説明するだけで、特定の銘柄や時点についての判断は扱いません。
口座を頻繁にのぞくほど、損失を経験する回数が増えます。同じ資産でも一日単位で見れば下がった日が多く見え、数年単位で見ればその揺れはずっと小さく感じられます。損失が利益より大きく感じられる傾向と重なると、頻繁に見るほど実際の結果と関係なく不安が増し、衝動的な売買が増えます。長期の計画で投資しているなら、確認の周期をあえて長くすることが感情の管理に役立ちます。価格の通知を切ったり、アプリを最初の画面から移したりといった単純な工夫も、思った以上に効果があります。
人は最初に触れた数字を基準点にし、その周りで判断する傾向があります。かつての最高値、誰かが示した目標株価、自分が最初に買った価格は、どれもこうした基準点になります。最高値から大きく下がったから割安だと感じても、その最高値が過熱した価格だったなら、下がった後の価格もまだ割高かもしれません。逆に大きく上がった資産は、最初に見た価格のせいで高く見え、見直す機会を逃すこともあります。基準点を意識するだけでも効果があり、価格そのものよりその価格が何を根拠にしているかを問う習慣が役立ちます。
偏りを減らすのに最も安定して効く道具は記録です。売買をするたびに、日付、金額、理由、その時の気持ち、判断が間違っていたと見る条件を短く書いておきます。数か月後に読み返すと、結果が良かった判断の中にも理由がずさんだったものがあり、結果が悪かった判断の中にも過程は筋が通っていたものがあることが見えてきます。結果と過程を分けて見る練習が、後知恵の偏りを減らしてくれます。記録は人に見せるためのものではないので長く書く必要はなく、三行で十分です。
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